「認知症は特別なことじゃない」-父の介護を通して感じたこと
「認知症」って聞くと、ちょっと構えてしまいますよね。
かつてのわたしもそうでした。認知症と聞いただけで、「どうしよう…」「これから先どうなるの?」と不安ばかりが押し寄せてきて。
でも、実際に父の介護を経験した今、はっきり言えることがあります。
認知症って、けっして“特別な病気”ではないんですよね。むしろ、誰にでも起こりうる、ごく身近なものなんです。
■ 最初は「うちには関係ない」と思ってた
わたしの父は頑固で、昔ながらの昭和の男って感じの人でした。体は弱くなってきたものの、頭はしっかりしてると思ってたんです。
だから、最初に物忘れが増えてきたときも、「まぁ年のせいだよな」と軽く受け止めてました。
でも、あるとき「なんで風呂をわざわざ外に作ったんだ?」と言い出したんです。
そんなことしてないのに、本人は本気でそう思っていて、会話がかみ合わない。
正直、そのときはかなりショックでした。
「まさか…」って、胸がざわついたのを覚えています。
■ 調べてわかった、身近すぎる数字
その後、病院で診てもらって「中程度の認知症」と診断されました。
わたしは混乱しながらも、少しずつ情報を集めていったんです。
そこでまず驚いたのが、65歳以上の7人に1人が認知症になっているというデータ。
さらに、85歳を超えると、3人に1人という数字まで上がるそうです。
これって、もう“珍しい病気”どころじゃないですよね。
たとえば、友だちや職場の同僚の親御さんだって、きっと同じような悩みを抱えてる人がいるはずです。
そう思ったら、ちょっとだけ肩の力が抜けたんです。
■ 「普通の老い」と地続きなんですよね
認知症って、突然“別人”になるようなイメージを持ってしまいがちですけど、実際はそうじゃありませんでした。
父は父のままでした。
ただ、できることが少しずつ減っていったり、物事の捉え方が変わっていっただけ。
会話のテンポが合わなくなっても、それは“父らしさ”が消えたわけじゃなかったんですよね。
わたしが手を貸すと、「悪いな」「ありがとう」と照れくさそうに言う。
そんなところは、昔と何も変わらなかったんです。
■ 周りのまなざしが変わるだけで、救われる
ただ、世間の“目”がまだまだ厳しいのも事実です。
近くに住む親戚の人に「お父さん、最近ちょっと変わったね」と言われたとき、内心すごく落ち込みました。
まるで「恥ずかしいこと」が起こったかのように扱われるのが、本当に辛かったです。
でも、実際は「恥ずかしがる必要なんてないこと」なんですよね。
むしろ、もっとオープンにしていい。
「うちの親、今ちょっと物忘れがひどくてね」って、普通の会話の中で話せるようになったとき、わたし自身の気持ちもラクになりました。
■ 一人で抱え込まないでほしい
認知症のことって、家族が気づいても、なかなか口に出せないものですよね。
「親の尊厳を傷つけたくない」とか、「本人に悟られたくない」とか、いろんな気持ちがあると思います。
でも、ひとりで抱え込むと、どんどん追い詰められてしまう。
わたしは家族会や地域の支援センターに話を聞いてもらったことで、本当に救われました。
似たような経験をしている人は、思ったよりたくさんいます。
話してみると、「うちもそうだったよ」って言ってくれる人、けっこういるんですよね。
■ 認知症は“人を失うこと”じゃない
わたしがいちばん伝えたいのは、認知症になっても、親は親のままだってことです。
病気で少しずつできないことが増えていっても、その人の“らしさ”や“想い”はちゃんと残っています。
だから、過度に怖がったり、「終わり」みたいに思わないでほしい。
認知症は、あくまで“変化”のひとつ。人生の中の自然な流れなんです。
■ おわりに
「認知症」と聞くと、どうしても構えてしまいがちですよね。
でも、決して遠い話ではありません。7人に1人という数字が示すように、誰の家庭でも起こりうること。
そしてそれは、“特別なこと”じゃないんです。
あなたも、わたしも、みんなが当事者になりうる。
だからこそ、ひとりで悩まず、誰かと気持ちを分かち合いながら、少しずつ向き合っていけたら??。
そう願っています。