親父殿 VS 時計
いつの間にか親父殿は時計もカレンダーも読めなくなっていた。
脳梗塞で入院していたときから怪しくはなっていたが、いまではまったく読めない。
正確には〇時〇分というのはわかっているようだけれど、それがなにを意味しているかを理解していない感じ。
「〇時になったら買い物に行くよ」といっても5分おきに「まだか?」と聞いてくる。
在宅で仕事をしているときはさすがにこっちもイライラしていたが、いまではもうあきらめた。
リビングには壁掛けのアナログ電波時計があるのだが、ひょっとしたらデジタル時計なら読めるのではないかと思った。
テーブルに置けるサイズで、できるだけ表示がシンプル。そして文字が大きくて見やすい。
これを条件に探したところいいものが見つかった。これならカレンダーとしてもわかりやすい。
価格:4,944円 |
これをテーブルにおいて親父に見せたところ、アナログ時計よりは確実に見やすい様子。
〇月〇日、〇時〇分としっかり読めるようになった。
ちょっと値段は高かったが、いい買い物だった。
しかし数日後、事態は急変することになる。
朝方、リビングからだれかの話声がする。
といっても親父殿しかいないのだが。
鏡はマスカーテープで隠しているし、なにと話しているのかと思ったら新しく買った時計だった。
表面に反射している自分にずっと「どっかいけ」と文句を言っている。
この時点で時計はお蔵入りとなっていしまったけど、ここまで症状が進行してなければベストな時計だったのは間違いない。
ちょっと残念だ。