親が病院に行きたがらない-受診を嫌がるときの声かけと工夫
「お父さん、病院行こうよ」と声をかけると、「行かなくても大丈夫だ」「何のために行くんだ」とむっとした顔。
わたしが介護をしていた父も、そんなふうに病院嫌いでした。
認知症の症状が出始めていたころは特に、「病院=自分が何かおかしいと認めること」みたいに感じていたのかもしれませんね。
でも、放っておくわけにもいかないんです。
お薬の調整や症状の確認、日常生活の中で気づいた変化を伝えるためにも、定期的な受診はとても大切なんですよね。
だからこそ、どうやってその“気持ちの壁”を乗り越えるかが、本当に悩ましいところでした。
■ 「本人の気持ち」を無視しない声かけが大事
「病院行くよ!」と命令口調になると、だいたい拒否されていました。
「なんで行かないといけないんだ」「具合が悪くないのに」と、口げんかになったこともあります。
そんなときに心がけたのが、「本人の気持ちをまず受け止める」ことでした。
「行きたくない気持ち、わかるよ。でも、いつもの先生に顔だけ見せてこようか」とか、「今度の診察で薬が合ってるか見てもらえるって言ってたよ」と、“納得できそうな理由”を添えて伝えるようにしたんです。
ちょっと遠回りな言い方ですが、こうすると案外スムーズに動いてくれることもありました。
■ 嘘じゃないけど、少し「言い方を変える」
「病院に行こう」と言うと拒否されるのに、「先生のところに顔出そうか」とか「体操の先生に相談しに行こう」と言うとすんなり準備を始める。
そんな不思議なこと、ありませんか?
これは認知症のある方に多い反応で、「病院」「診察」という言葉にプレッシャーを感じるからだと思います。
わたしの場合、「お薬の相談に行く」とか「先生に会いに行こう」という表現に変えるだけで、父の受け入れ方がずいぶん違いました。
言葉って本当に大事ですよね。
正直に伝えるのはもちろん大事ですが、“言い方の工夫”って、介護ではとても大切だと実感しました。
■ 「病院=イヤな場所」にしない工夫
受診後には、父が年々も通っていた野菜の直売所に立ち寄るようにしていました。
「帰りに直売所で野菜を買おう」と誘うと、それが目的になって病院も「ついで」のように感じてくれるんです。
受診を“ごほうび付きの外出”にする。
そんな感覚です。
待ち時間が長いと疲れるので、事前に診察の混雑状況を電話で確認したり、予約時間を調整してもらったりもしました。
小さなことですが、父の「病院は疲れる、嫌だ」という気持ちを少しでも減らせるように気をつけました。
■ どうしてもダメなら「プロに頼る」選択も
どうしても受診を拒否されることもありました。
体調に明らかに変化があっても、頑として行こうとしない。
そんなときは、ケアマネジャーさんや訪問看護師さんに相談しました。
医療職や専門職からの「第三者の声」は、わたしの言葉よりも父に響くことがありました。
「お父さんの体のことが心配で、先生も一度見ておきたいって言ってたよ」と、プロの立場から優しく伝えてもらうと、少し素直になってくれるんですよね。
家族からの声掛けじゃない方がいいこともありますよね。
■ わたしが一番学んだこと
「行きたくない」という気持ちには、必ず理由があります。
本人がうまく言葉にできないこともありますが、不安だったり、自分の変化を認めたくなかったり。
「なんで素直に行ってくれないんだ」とイライラしていたころの自分に、今なら言ってあげたいです。
「それ、当たり前の反応だよ」って。
わたしたちだって、行きたくないところに無理やり連れて行かれたら嫌ですよね。
介護をする側としては、効率やスケジュールを考えたくなるけど、それを押し付けると余計にうまくいかなくなる。
だから、なるべく「本人が安心できるやり方」を一緒に探すこと。
それが、受診への一番の近道なんだと思います。
■ まとめ:病院に行かせる、ではなく「行けるようにする」
「親が病院に行きたがらない」って、本当に多くの人がぶつかる壁ですよね。
でも、頭ごなしに説得しようとしても逆効果。むしろ、“行きたくない気持ち”に寄り添うことが、遠回りのようで一番の近道だったと、わたしは感じています。
病院に行かせるのではなく、「行けるように、気持ちを整える」。
それって、わたしたち介護する側にできる大事なサポートですよね。
この記事が、同じように悩む誰かのヒントになれば嬉しいです。