電子レンジに黒コゲのカップラーメン
仕事から帰宅し、玄関を開けた瞬間、いつもと違う匂いが鼻をついた。
焦げ臭い。
しかも、ただの「焼きすぎた」レベルの匂いじゃない。
一瞬、火事が頭をよぎったが、さすがにそこまでではなかった。
靴を脱ぎながら急いでキッチンへ向かうと、電子レンジの中に黒コゲになったカップラーメンの容器がぽつんと鎮座していた。
容器の一部が溶けかかり、麺はほとんど炭化。
レンジの庫内にも黒いシミが残っていて、しばらく取れそうにない。
「……親父殿」
いったいどのくらい加熱したらこんな状態になるのか。。。
最近は、わたしが出勤前に朝食を食べさせ、昼食と夕食は作り置きしたものを冷蔵庫に入れて置いている。
親父殿は食べたいものをチンするだけで済むようにしていた。
たぶんその日は棚にあったカップラーメンを手に取ったのだろう。
けれど、お湯を注ぐという手順が思い出せなかった。
そして、お湯の代わりにそのまま電子レンジに入れて加熱してしまった--おそらく、だが。
わたしの買い置きが仇になった。
今の電子レンジはオーブン機能もついた多機能タイプで、ボタンがいくつもあり、文字も小さい。
親父殿にとっては、まるでパズルか暗号解読だったのだろう。
オーブン機能を使わなかったのは幸いだが、それでも加熱時間はかなりもものだっただろう。
「危ない」と思った。
いや、正確に言えば「ついに電子レンジも使えないのか」と、困惑した。
でもこのままでは火事になる可能性だってある。
迷っている場合ではなかった。
翌日の仕事帰り、さっそく家電量販店へ向かった。
シンプルな電子レンジに買い替えるためだ。
ところが、いざ探してみると意外と難しい。
タイマー式のものは、ダイヤルを回すのに意外と力が必要で、親父殿の握力では難しそう。
かといって、おしゃれ系の電子レンジは文字が小さくて見づらい。
シンプルと言いつつも、やはり「若者向け」に作られている。
そのなかで見つけたのが、ツインバードのDR-D419。
ターンテーブル式で、タイマーと出力の2つのダイヤルだけという潔さ。
何より、タイマーのダイヤルが軽くて回しやすく、文字も大きくてはっきり見える。
出力は500wの位置でテープで固定すれば問題ないだろう。
すぐに購入し、そのまま持ち帰る。
先日の液晶テレビに比べれば楽なものだ。
帰宅後すぐに電子レンジを入れ替える。
親父殿にも実際に触ってもらった。
「このつまみをここまで回せば、温まるよ」と実演して見せると、珍しく素直に「うん、うん」と頷いた。
ひょっとしたら昨日の失敗をなんとなく覚えているのかもしれない。
もちろん、すぐに完全に覚えられるわけではないだろう。
だが、「自分でできる」という感覚を取り戻してくれるだけでも価値はある。
万が一の長時間加熱を避けるため、家にあったゴム製の小さい緩衝材をダイヤルと本体に付け、2分程度までしかダイヤルが回らないように細工をした。
これなら安心だ。
キッチンはまだ焦げ臭い。
そう遠くないうちにこの電子レンジも操作できなくなってしまうのだろうか。
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