認知症対策

認知症で親お金が使えなくなる?-“資産凍結”のリアルと家族の選択

認知症で親のお金が使えなくなる?

「もし父が認知症になったら、銀行口座ってどうなるの?」
正直、最初はそんなことまで考えていませんでした。
介護のことで頭がいっぱいで、「お金の管理」なんて、まだ先の話だと思っていたんです。

 

でも実際に父が認知症と診断されてから、すぐに“壁”にぶつかりました。
それが「資産凍結」という問題でした。

 

■ お金が“あるのに使えない”って、どういうこと?

わたしの父は、70代半ばで認知症の初期と診断されました。
その少し前までは、まだ自分のことはある程度できていて、銀行にも自分で行けていたんです。

 

ところが、ある日「通帳がなくなった」「お金を機械(ATM)に忘れてきた」と不安そうに言い出しました。
それを機に、「そろそろお金の管理を手伝おう」と話し合ったんです。

 

でも、ここで問題が出てきました。
本人が認知症と診断されたあとは、口座の名義人以外が勝手に通帳を操作することは基本的にできないんです。

 

「家族なのに、なんで?」って思いますよね。
でもこれが、「資産凍結」の始まりなんです。

 

わたしも父の生活費を管理していた時期があるのですが、そのときにキャッシュカードが磁気不良を起こしてしました。
ATMでは操作できず、窓口にお越しくださいとメッセージが。

 

わたしがそのまま窓口に向かうと行員の方から一言、「ご本人様でないと再発行手続きができません」と。

 

わたしは行員の方に状況を伝えました。
「父は病気をしていた影響で字をうまく書くことができません。ただ意思の疎通はできるので一緒にきて同席することは可能です。それで手続きは可能ですか?」と。

 

すると行員の方は「ご本人の自署ががないとご本人の意志とは認められない」とのこと。
父は脳梗塞の後遺症で思うように文字を書くことができません。
(注:あとから別の支店で本人が同席して意思の確認が取れれば再発行できることになりました。が、必ずできるかはわかりません)

 

「それであれば成年後見人制度を利用するなど別の方法が必要です」と。

 

その場で市役所に連絡し、成年後見制度について聞きましたが、それには煩雑な手続きとかなりの時間がかかることがわかりました。
そしてキャッシュカードの再発行はできなかったのです。。。

 

■ 将来、父の家を売る予定だったけど…

これはわたしの会社の上司に聞いた話です。

 

その上司のお父様は古い一軒家にひとりで住んでいました。
ただ、いつか介護が大変になったら施設に入ってもらうことも考えていて、その費用の足しにするために、「いずれこの家を売る」予定でした。

 

でも問題はそこにもありました。

 

不動産って、本人の意思で契約しないと売れないらしいです。
認知症が進んで「判断ができない状態」になったら、契約自体ができなくなるんだそうです。

 

つまり、家が売却できない。

 

お金が手元にあっても、使えない。
上司はしばらくの間、自分の貯金でお父様を支えることになったそうです。

 

これが、認知症による「資産凍結」の本当の怖さだと、わたしはその話を聞いて気づきました。

 

■ 「成年後見制度」って、そんなに万能じゃない

市役所に相談したとき、紹介されたのが「成年後見制度」でした。
これは、認知症の本人に代わって、裁判所が選んだ後見人が財産を管理する制度です。

 

でも正直、これには不安もありました。

 

まず、裁判所が選んだ人が後見人になることもあるので、家族が思った通りに使えるわけではありません。
しかも、報告義務があったり、費用がかかったりするんです。

 

「わたしが父を支えているのに、なんでそんなに手間がかかるの?」と思ってしまいました。

 

■ わたしが選んだのは「家族信託」

いろいろ悩んだ末に、わたしが選んだのは「家族信託」という方法でした。

 

「信託」という言葉、難しそうに聞こえますよね。
でも、実際には家族間で“財産を預ける契約”をしておくというシンプルな考え方です。

 

たとえば、父が「この家は息子(=わたし)に管理してもらっていい」と信託契約を結んでおけば、わたしが代わりに売却手続きができるようになります。
もちろん、使い道は「父のために」限定されるので、不正にも使えません。

 

この方法を選んだことで、父の家の売却や、口座の管理に備えることができました。

 

■ 家族信託は「元気なうちに」が鉄則です

家族信託の一番大きなポイントは、本人がまだ“判断できるうちに”しか契約できないということです。
つまり、認知症がかなり進んでからではもう手遅れなんです。

 

わたしは、父がまだ軽度の段階で「今後のこと」を一緒に話せたので、契約ができました。
本人が納得して、自分の将来のために決められたこと。
それが、何よりよかったと思っています。

 

■ まとめ:お金のこと、家族でちゃんと話すことから始めませんか?

介護のことって、どうしても「日々の生活」に目がいきがちです。
でも、その土台にあるのは“お金の管理”なんですよね。

 

ちょっと重い話だし、つい後回しにしてしまいがちです。
でも、「お金があるのに使えない」という状況になってからでは、本当に困るんです。

 

家族信託や成年後見制度、どちらが合うかは人によって違います。
でも、まずは「お父さん、もしもの時、どうしたい?」と聞いてみる。
そこから始めるだけで、未来はぐっと変わると思います。

 

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