認知症対策

「在宅介護って実際どんな感じ?」-わたしと父の、ある一日

在宅介護ってどんな感じ?

在宅介護って、正直なところ、やってみないとわからないことばかりですよね。
わたしもそうでした。父が認知症と診断され、「自宅で介護する」と決めたものの、何から始めたらいいのかわからず不安でいっぱいでした。

 

今回は、そんなわたしが経験した休日の「在宅介護のリアルな1日」をご紹介したいと思います。
どなたかの参考になればうれしいです。

 

■ 朝6:00 目覚ましより先に、父の物音

わたしの1日は、1Fから聞こえてくる「ガタッ」という音から始まります。
父は自分で布団から出て、になやら思うことを勝手にはじめます。

 

まずはトイレの介助。
「トイレ行きたいのか、行きたくないのか」
言葉があいまいなときもあるので、父の表情や動きで判断します。
こういうのって慣れるまでは本当に難しい。

 

そのあとはオムツ交換と着替え。パジャマから普段着に着替えるだけでも、時間がかかる日があります。
でも、きちんと身なりを整えると、父の表情が少しシャキッとするんですよね。

 

■ 朝8:00 朝食は栄養バランスより“食べやすさ”が勝負

朝食は基本的に、ごはんとひきわり納豆、みそ汁、やわらかいおかず。
認知症になると食べ物をうまく飲み込めないこともあるので、小さく切ったり、トロミをつけたりと工夫が必要です。

 

「これは何だ?」と聞かれることもありますが、「納豆だよ」「昨日も食べたよね」と、会話しながらゆっくり進めます。
父はとくにお惣菜のしなっとしたコロッケが好きでした。

 

■ 午前中は、なるべく“やること”をつくる

午前中は、なるべく何かしらの“活動”を入れるようにしています。
わたしの出勤前に一緒に近所を歩いたり、晴れた日は近所の川べりを散歩をしたり。
体を動かすことも、気分転換も、父にとっては大事なんですよね。

 

雨の日は新聞を一緒に読んだり、昔のアルバムを眺めたり。
「この写真、覚えてる?」と聞くと、時々ふっと思い出すんです。
そういう瞬間が、ほんとうにうれしい。

 

■ 昼12:00 食事、そして昼寝タイム

お昼もやわらかいごはんを基本に、あまり噛まなくていいものを。
「こぼしても大丈夫なように」って考えるので、いつの間にか同じメニューに偏ってしまうこともあるんですよね。
たまに工夫して「卵焼き」を出したら「これうまいな」と言ってくれて、ちょっと泣きそうになりました。

 

食後は昼寝。
この時間は、わたしにとっても小さな“休憩時間”です。

 

■ 午後は、父の“気分”に合わせて

午後は日によってまちまちです。
機嫌がいい日は一緒にテレビで録画した野球を見たり、買い物に行ったりしますが、何もかもイヤそうな日もあるんです。

 

そんなときは無理をせず、静かにそばにいるだけ。
「今日はそういう日だな」と思って、寄り添うようにしています。
でも自分がコントロールできない時間に合わせるのって、意外と難しい。

 

■ 夕方は“魔の時間帯”でもある

夕方になると、不安や混乱が強くなる“夕暮れ症候群”と呼ばれる状態が出ることがあります。
父も「家に帰る」と言い出したり、「誰かがいる」と怯えることが増える時間帯でした。

 

そんなときは、部屋の明かりを早めにつけて、落ち着いた音楽を流したり、手を握ったり。
物理的に明るくするだけで、気持ちが少し和らぐこともあります。
試行錯誤の連続ですが、少しでも父の不安を減らせたらと、毎日工夫しています。

 

■ 夜9:00 やっと訪れる“静かな時間”

夜はできるだけ決まった時間に布団に入るようにしています。
「おやすみ」と言ったあと、部屋に戻っても、何度も呼ばれることもあります。
「外に出たい」「トイレに行きたい」「布団が冷たい」…

 

正直、イライラする日もあります。
でも、そんな日でも、父が安心した表情をしていると不思議と心が穏やかになります。
がんばろうって思えるんですよね。

 

■ まとめ:100点を目指さなくていい

在宅介護は、正直、大変です。
思うようにいかないことも多いし、自分の時間なんて、ほとんど持てません。

 

でも、100点を目指さなくていいとわかったとき、わたしはずいぶん楽になりました。
できる範囲で、できることを、できるときにやる。
完璧じゃなくていいし、うまくいかない日があってもいい。

 

『父とわたしの中間の楽さを選ぶ』

 

わたしの1日はそんなふうに、少しずつ積み重なっているんです。
同じように在宅介護に悩んでいる方に、「あなたもひとりじゃないですよ」と伝えたいです。

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